4/10/2023 大西 宏佑 Manager
ロジャナ工業団地アユタヤにおける2023年度の洪水、渇水状況について
2023年5月22日からタイは雨季に突入しております。現在10月2日も雨季が続いておりますが、入居企業様やその他近隣の企業様から気候変動による直下型の雨により、洪水懸念についてお問合せをいただいております。
結論から申し上げますと2023年10月末にアメリカ海洋大気庁(NOAA)よりエルニーニョ現象のアナウンスがされる可能性が高い状況、つまりタイでは洪水ではなく渇水懸念が高まることが予測されております。具体的にどういった現象が発生しているかご説明させていただきます。
入居企業様へはメーリングリストで送付させていただきますが、今年は洪水レポートではなく、24年1月から渇水レポートを当HPの「Water level」に掲載する予定です。※今後の状況によっては、掲載内容に変更がある可能性があります。
勿論、ロジャナ工業団地の入居企業様には、直接お話させていただくことも可能ですので、お気軽にお問合いあわせください。
主要4ダムの貯水量(2023年10月2日時点)
上図は、青色が昨年のラニーニャ現象の際のダム貯水量推移です。(ラニーニャ現象=太平洋赤道域の水温が通常より低く、タイでは大雨が観測される)。赤色は2023年現在のダムの貯水量。水色は過去タイにおいて深刻な干ばつが発生した2015年。黄色は最低限必要な貯水量だとされている下限ラインです。
下図は10月2日時点における主要4ダムの貯水量を数値化したものです。(単位:百万㎥)現時点で渇水懸念のあった2015年よりは貯水量が多い状況です。これらの状況を鑑みてIEAT(工業団地公社)は、今年の渇水自体は大きな問題ではないとコメントしておりますが、FTI(タイ工業連盟)は水の状況を注視すべきと政府へ提案しております。
因みに2015年の渇水では以下が発生しています。
- 1981年以来、最低の年間降水量を観測
- 全ての大規模ダムの貯水量が危機的な低水準となった。
- 大気汚染問題に繋がる山火事の増加
- 主要河川の水位の枯渇
- 農作物の収穫量が大幅に減少し、多くの食料品の価格が上昇
- バンコク東部とパトゥムタニ県の灌漑システムにおける水量の不足
- ランプーン県における工業用水の不足
なぜ今年は渇水懸念が予測されるのか
上図はアメリカ海洋大気庁(NOAA)が発表している海洋ニーニョ指数です。海面水温の3か月平均と過去の30年間の平均水温との差を比較し、5か月連続で+0.5以上となった場合をエルニーニョ現象と定義しています。
要は、赤字はエルニーニョ現象(渇水懸念)青字はラニーニャ現象(洪水懸念)です。上図の数字の通り、洪水が発生した2011年はラニーニャ現象が発生。2020年8月から2023年の1月までは、一部を除いてラニーニャ現象が発生しております。昨年は2011年洪水時並みの大雨がチャオプラヤー流域に降っていましたが、タイ政府やロジャナの洪水対策もあり、団地内の水位に全く変動はありませんでした。昨年の大雨の総括は以下記事をご参照ください。
2023年4月~8月まで海面水温の三か月平均が+0.5以上となっておりますので、7~9月の平均海面水温及び8~10月の平均海面水温が過去30年間の平均水温より+0.5度高かった場合、エルニーニョ現象となります。黒字のニュートラルな状況にもどる可能性もありますので、現時点で渇水懸念があるかといわれるとそうではありません。
結論
以上の通り、2023年10月末に恐らくエルニーニョ現象が発生する可能性があり、タイ国内で渇水が予測されます。現時点で2015年に相当するような状況ではありませんが、2023年は洪水レポートではなく渇水レポートが必要になる可能性があります。今後の状況にもよりますが雨季が終わりダムの貯水量が減りだす24年1月から、渇水レポートを配信を検討しております。
ロジャナ工業団地の渇水対策については別記事でまとめて記載させていただき、入居企業の皆様にはアナウンスさせていただきます。
一方、気候変動により、一部の地域で局地的で猛烈な雨が降っておりますので入居企業様及びタイに進出されている企業様は十分ご注意いただき対策の点検をお願い申し上げます。