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タイ灌漑局を訪問 ― チャオプラヤ川流域「洪水対策9計画」と建設中のバンバーン-バンサイ放水路の最新状況

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1/09/2026 大西 宏佑 Manager

ロジャナ工業団地は2026年8月14日、タイ王国 農業協同組合省 灌漑局(Royal Irrigation Department/RID)の「大規模灌漑建設事業所第10(Construction Project for Large Scale Irrigation 10)」を訪問し、チャオプラヤ川下流域における国家レベルの洪水対策の進捗について説明を受けました。

2011年の大洪水から15年。「今、タイ政府はどこまで洪水対策を進めているのか」は、ご入居企業の皆様にとって事業継続(BCP)上の大きな関心事であると考えております。本記事では、灌漑局よりご提供いただいた資料をもとに、9つの国家洪水対策計画の全体像と、現在唯一実際に建設が進んでいる「バンバーン-バンサイ放水路」の最新進捗をご報告いたします。

灌漑局 大規模灌漑建設事業所第10での面談の様子(2026年8月14日)

目次

1.チャオプラヤ川下流域「洪水対策9計画」の全体像

灌漑局は、チャオプラヤ川下流域の洪水被害を軽減するため、川の東側・西側・本川に分けて9つの計画を推進しています。概要は以下の通りです。

チャオプラヤ川 東側

  • 計画1:パーサック運河の灌漑・排水能力改善 … 既存の排水能力を毎秒210㎥から400㎥へ拡大。ADB融資と国家予算を活用し、現在は閣議承認待ち。
  • 計画2:チャイナート-パーサック-タイ湾プロジェクト … 世界銀行の支援を受ける大型計画。毎秒930㎥規模の新たな複線運河を掘削し、洪水をタイ湾へ直接流す。9計画の中で最も効果が大きいと位置づけられている。
  • 計画3:環状道路および排水路整備 … 道路部分は設計済み、排水路部分は環境影響評価(EIA)中。

チャオプラヤ川 西側

  • 計画4:西側地域の灌漑・排水システム改善 … 計画1の完了後、同様のモデルで実施予定。

河川本川・その他

  • 計画5:チャオプラヤ川の浚渫 … 海事局が担当。川全体で毎秒2,800㎥を流せるようにする(現在、最狭区間は毎秒1,200㎥程度)。
  • 計画6:堤防内外の居住・道路対策 … 洪水時に浸水する河川沿い地域で、住宅のかさ上げや道路・橋梁の改良を実施。
  • 計画7:バンバーン-バンサイ放水路 … 9計画のうち、現在唯一実際に建設が進行中(詳細は次章)。
  • 計画8:ターチン川の排水能力改善。
  • 計画9:10か所の遊水地管理 … 農地を一時的な貯水区域として活用。実施には稲刈り終了後、住民の同意を得る必要がある。

チャオプラヤ川下流域の洪水対策全体計画(出典:タイ王国灌漑局)

2.建設中の「バンバーン-バンサイ放水路」とは

計画7「バンバーン-バンサイ放水路」は、2015年から設計・住民参加プロセスを進め、2019年に着工した放水路(フラッドウェイ)です。アユタヤ市街地を大きく迂回する全長22.5kmの新設運河で、毎秒1,200㎥の排水能力を備えます。

現在、アユタヤ県内のチャオプラヤ川はボトルネックとなっており、本川で毎秒約1,200㎥、既存のバンルアン運河・バンバーン運河経由で毎秒約530㎥、合計毎秒約1,730㎥しか流下させることができません。これが繰り返される洪水の一因となっています。本放水路の完成により、この区間の排水能力は毎秒2,930㎥へと大幅に向上する見込みです。

市街地を通過する区間はコンクリート護岸として幅を絞り、一般区間は幅約200mの土構造とする設計です。船舶の通航に配慮した通船施設付きの水門や、流況の変化による河岸侵食を防ぐ護岸補強も計画に含まれています。

バンバーン-バンサイ放水路のルートと排水イメージ(出典:タイ王国灌漑局)

プロジェクト概要

事業主体タイ王国 農業協同組合省 灌漑局(RID)大規模水資源開発局/大規模灌漑建設事業所第10
位置アユタヤ県 バンバーン郡 ~ バンサイ郡(バンパイン郡付近でチャオプラヤ川へ合流)

工区別の事業実施スケジュール(2019-2030年/出典:タイ王国灌漑局)

期待される主な効果(灌漑局資料より)

  • アユタヤ県市街地およびチャオプラヤ川下流域の洪水被害の軽減、浸水水位の低下
  • 農業用水としての水資源ポテンシャルの向上、および貯留水の有効活用
  • アユタヤ市街地を迂回するバイパス水路の確保
  • 運河沿いの道路によるバンバーン郡-バンサイ郡間のアクセス改善
  • アユタヤ県の新たな観光資源としての活用

3.工業団地への影響 ― 9計画完成後の見通し

灌漑局によれば、9つの計画がすべて実施された場合、2011年に約1,100万ライに及んだ浸水面積は約500万ライまで縮小する見込みとのことです。うち約400万ライは浸水深1m以下、約100万ライが1m超と想定されています。

2011年にロジャナ工業団地アユタヤを襲った水はチャオプラヤ川水系から流入したものであり、これらの計画が完成すれば水は別ルートで排水されるため、工業団地への浸水リスクは大きく低下します。

なかでもロジャナ・アユタヤにとって重要なのは、パーサック川からの流入量を減らす計画1および計画2です。特に計画2は効果が大きく、早期の推進が望まれます。ロジャナ工業団地としても、これらの計画の進捗を継続的にフォローしてまいります。

4.ロジャナ工業団地自身の洪水対策

国家プロジェクトの完成を待つまでもなく、ロジャナ・アユタヤ工業団地では2011年の洪水後、自らの手で徹底した対策を完了しています。

詳しくはこちらの記事をご確認ください。

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